夏と記憶

 

早朝は亡霊の住処

消滅しそびれた亡霊であふれている

生ぬるい風が吹く

1日の中で唯一無二

神様がゆるした風なので

わたしも仕方ないからゆるしてあげる

髪を結んで開いて結んでは

亡霊にいりまじる時

わたしはわたしの形をしている

手のひらより小さい炎がゆれるとき

風がわたしの前にいた

指を舐めて風向きしらべ

知らない記憶を思い出す夏休み

蒸発しては消滅する季節

▽セーブデータは残っていません

暑さばかり更新するけれど

記憶がないまま今年も進む

から、大丈夫だよ

 

思いばかり馳せる夏

目の前通り過ぎゆくエトセトラ、に

目をつぶって指先でつつくばかりのわたし

どうかゆるしてほしい、夏

 

自転車二人乗りして向かうタワレコ

すれ違う先生に怒られて

「ごめんなさーい」と街並みが

ぐんぐん遠ざか、る、放課後

クーラーの効いた教室で読む小説

窓枠、ファインダーをかざしたみたいだった

 

教室の蛍光灯より明るい夏

フラペチーノと片想いに夢中

ニ度と戻れない、戻らないぼくら

脳内トリップが得意、人間だもの

すり切れて美しく淘汰される記憶

「レコードと同じ、これが味よ」

ままが言ってたわ

 

愛を込めて、夏。 

今年も宜しくさようなら