境界線

 

たいくつをひきのばしたみたいな春の日

想い出ばかり美しくなっていくけれど

わたしは美しくなれないまま

桜は今年も綺麗を更新する

散ってしまえば見向きもしなくなる

ような貴方であればよかったな

ブラウスの隙間から滑り込む風が夏だから

数週間後に季節が変わる

桜が散って、夏がきて、 

消費期限の差し迫った食パンに

わたし今なら寄り添えます

 

栞を挟んでお気に入りのブックカバーをかけた本から

順番に紛失してゆく不思議 

夏の到来 雨 嵐

のようなわたしでありたかった

春は浮いたり沈んだりしていそがしい

5センチ宙を歩いたと思いきや

マイナス10センチの深さを泳いでいる

足元、いつもおぼつかない

躓いたら桜の花びらを拾うついで

手をさしのべていただけますか

近道ばかり人が殺到していく中で

わたしと一緒に遠回りを愛してくれる

君を募集中です