十月の詩

 

温度が数度下がっただけで夏は息をひそめた

まだ夏に別れも告げぬまま

まだ夏を満喫しないまま

まだ夏のせいにしたこと、謝ってないまま

温度が数度下がっただけで、秋 

 

風に散ったオレンジの香り

季節の変わり目に心が動かなくなったから大人

大人になんてなりたくなかった、のに

なんてかわいい台詞だね

 

好奇心をかいたおばけの行進、ゆらり、ふらり

横断歩道の白い線の上だけ歩く、約束ね

つま先に意識したって向かう先は同じなのに 

ありったけの愛が欲しいと願うことは

贅沢ですか

 

幸福の象徴みたいな君に永遠になれないことが 

こんなにも悲しいとは知らなかったので

三マス戻る、戻る、戻る

 

単価の安い言葉に一喜一憂

あっちへカタリ、こっちにゆらり

転がされてるんだけど終着点はどこ

 

月が綺麗な夜に

金木犀の香りのする宵に

ほろ酔い気分の真夜中に

煙草の灯りが同じ色だと気がつきました

 

世界で一番美しい場所ってどこですか

さよならから一番遠い場所ってどこですか

わたしたちの哀しみを寄せ集めた場所ってどこですか

 

答えのないものばかりで嫌になっちゃうから

先生にはなれません

 

時はいつの日にも親切な友達だけど

風化する記憶をいつまでも抱きしめてたい

わたしにとっては天敵かもしれない

 

好きという言葉には一ミリくらいしか

意味がないのだとしたら

好きを千個あつめて貴方に贈ります

 

 甘い香りをまとった雨が

いつまでも優しく降っていてくれたらなあ

温度が数度下がっただけで、秋 

夏のない世界へ ようこそ