愛について

 

涼しい風が吹いた

夏が消えて あの子も消えて

わたしは1人になった

いつのまにかメロディも消え

静寂に取り残される夜の街の一人歩き

 

愛以外いらない 愛しかいらなかった

いくら探しても見つからない

世界のどこにもいない貴方に

恋い焦がれている

 

瞬きの隙間に 爪の先に 或いは月の綺麗な夜に

そして、血の通った肉体の内側に

いつも貴方はそばにいる

密やかに潜む秘密そのもの

 

誰もが虜になっている

誰もが躍起になっている

翻弄し翻弄される最中にいつも

貴方がいることをわたしは思い知らされる

 

人の一生の意味など宇宙からみれば

塵に等しく散ってゆけ

百番線じの言葉をもってしても

きっと止められないと思うわ

貴方を知り、振り回されるのが

この世の理 人の意味

遠い果てにて答え合わせ

手合わせしようね

いつかきっと

 

 

拝啓神様

使い古された言葉に夕陽が差し込んで綺麗だった。
ノスタルジー。エモーショナル。
風が吹き抜けてカーテンが揺らされたとき
きっとあの教室のカーテンも同じように揺れている。
チリンチリンと鳴る音が、どこからなのか
なんの音なのかわからないまま、わからないまま
この街を去ろうとしている。
夕陽。夕陽はオレンジだと言ったのは誰だったか。
言葉に光が当たって、使い古されなかった言葉の
ことをわたし、考えている。
口ずさむ、書きつけられる、怒鳴る、呟く、叫ぶ、
なぞる、打ち込む、脳裏に、思い起こす。
じんわりとあたたかいひかり。
使い古されなかった言葉も
使い古された言葉と同じくらい美しかったに違いない。
窓際はわたしと世界を繋ぐ境界線だった。
神様、世界でまっさらな言葉は、なんですか。

希望的な詩

  確かに自分がその場にいたということ
  時間が経つほど信じられなくなっていく
  僕ら人間は忘れっぽくて感傷的で可愛い
  時間は不可逆だから記憶は美しいのだし
  音楽は最高なものになっていくんだよね
  もう遠い日々だって確かに在ってそして
  その中にわたしも確かに在ったのだから
  その事実をたまに思い出すだけで何だか
  生きているような勘違い、もう数十年程
  続けていけるよきっと、人生は夢ばかり
  あ。と口をひらいてる間にいまが秒速で
  流れてゆくから去年のわたしも一昨年の
  わたしも瞬間的な観測で消えていった、
  消えていったあと残るはこうふくのみだ
  かなしいことも笑えてしまうのは冷淡で
  可愛いことだと思いませんか。ぼくらは
  生きていく。ひとまず。とりあえず。



境界線

 

たいくつをひきのばしたみたいな春の日

想い出ばかり美しくなっていくけれど

わたしは美しくなれないまま

桜は今年も綺麗を更新する

散ってしまえば見向きもしなくなる

ような貴方であればよかったな

ブラウスの隙間から滑り込む風が夏だから

数週間後に季節が変わる

桜が散って、夏がきて、 

消費期限の差し迫った食パンに

わたし今なら寄り添えます

 

栞を挟んでお気に入りのブックカバーをかけた本から

順番に紛失してゆく不思議 

夏の到来 雨 嵐

のようなわたしでありたかった

春は浮いたり沈んだりしていそがしい

5センチ宙を歩いたと思いきや

マイナス10センチの深さを泳いでいる

足元、いつもおぼつかない

躓いたら桜の花びらを拾うついで

手をさしのべていただけますか

近道ばかり人が殺到していく中で

わたしと一緒に遠回りを愛してくれる

君を募集中です

 

 

 

 

生きて

 

六月は神様に近い月

雨粒には神様が潜んでいて

誰かの手を引っ張って

そのくせ月はいつだって遠かった

表面をほうきとちりとりで

ちょっとだけいただいて

わたしの爪に塗ったら 

キラキラして可愛くて 

だから生きていけるような気がするけど、どう?

 

可愛かったら大丈夫

売れていたら大丈夫

幸福だったら大丈夫

 

大丈夫なんてこの世界にはまぼろし

like 赤子の手をひねる 

あ、こういう表現も死んでゆく、じゃないや、

殺されて抹消されてゆくんでしたっっけ

 

アイムソーリーとアイスクリームを添えようね

ハーゲンダッツは世界を救う」って 

わたし、割と本気だった

 

人間が消えて、言葉が残って、音が残って、声が残って、

感情と感傷だけが嫌みったらしい憎らしい

 

安っぽい感傷なんて捨ててしまえよ

消費者になんてなりたくなかった 

音だけが世界に響いていていてほしい

そこんとこだけ100年くらい揺らがないよう

頼むよ神様

 

生命の意味が見出せずとも

僕らは生きていかなければならないのだ

 

断片破片

 

痛いくらいの冷気が人間を殺していく。冬。何度もリピートする世界のプレイリストは美しくて隙がない。神様も信じちゃうくらいの、だ。かくいうわけで冬が今年も繰り返されている訳だけど、君はいまどこを生きていますか。ネイルのはげかけた爪の色がピンクで安心している。君の血はきっと綺麗な赤だよ。遠い昔からある花に名前をつけたら笑ってくれるのが君で、笑わないのが神さま。

 

さよなら、とかごめんね、とかどうでもいい言葉ばかりがたゆたっているせいで言いたいことなんか一つも存在の余地がなかった。iPhone一つには世界が詰まっているように見えるじゃん、あれ、嘘だから。僕らの容量はiPhoneに喰われてるのよ、データ削除しないと、新しい写真は取る事ができません。よくわからないヨーグルトみたいな頭に砂糖と塩間違えて入れてしまうような人生。嫌いな人間が多すぎて人間が嫌いだ、わたしは来世ねこになります。地球。

 

地球という惑星はおもちゃ箱、周りの星は神さまが遊んだ後そのまま出しっぱなしにしたせいで、太陽が全部しまおうとしているけれど、神さまが愛したのはおそらく月。鉄板の上でじゅうじゅうと音を立てる丸いたこ焼きにエールを送る夜、もう1人のわたしは笑っていたしばかにしていたし一番かわいそうなのは月とたこ焼きだった。同情申し上げます。

 

破裂寸前の、もしくは風前の灯なので大事にされたいです、わたし。散らかった宇宙ステーションでダンスでもどうですか。エイリアンを愛することは多分無理だけど、愛について話してみるくらいはできるよきっと。コーヒー、紅茶、お茶、わたしのうちにくれば素敵なおもてなしをしてあげる。ねえ、君って眠い時口が悪くなるんだけど気づいてる?仮面、落ちてますよー。

 

 

閑話休題
恋って何それ美味しいの。
クボタカイしか勝たん。
女子力高くて君は最高。
言葉はいつだって幸福だ。
それを扱う僕ら次第。
不幸を主張するときは器が良くないんだよねえ。
『宇宙と繋がる!』 

 

 

エンドがハッピーであれといつまでも願っているけれどエンドなんて永遠にこなかった。終わりの見えないエンドロールに退屈すぎて死ぬ手前。面白い話してよ。笑う振りばかりしていたら笑い方を忘れてしまった、落し物、届いていませんか。疲れた顔で笑い合うのが美德だというならそいつはマゾだからスワイプして無視。うるせえ静かにしてくれよ。と言ったところでノープロブレムだから君は安心して海へ向かってくれ。

 

風。風と雨が轟々と音を立てているからとりあえずノリに乗っとくか。テキーラいただきました〜!遠い砂漠のサボテンに、心の中で愛を捧げるといいらしいよ。やってみたけど喉は熱くて愛は溶けた。

 

 

十二月二十五日

 

エトセトラとエトセトラ

人間の頭がどんどん冷やされて

反比例して過剰に生きてゆく僕ら

キラキラを身に纏っているだけで

幸福をかみしめていたはずなのに

隣で、隣の隣で、

流れ星か怪盗にでもなっている気分

恋人とか友達とかは幻覚あるいはまぼろし

確かなのはわたしの痛みを訴える

ヒールの中のつま先だけだった

足音が街に響いているから

「わたし此処にいます」

 

真夜中の都会は意外と生きているのに

朝一番最寄りのホームは死んでいる

朝を選ぶだなんてセンスがありますね

 

もう二度と、生きていけないような感覚

今年の冬こそ死を覚悟している

同じ歌も同じ詩も同じ時も存在しないから冬。

 

 

冬に神様が生まれたからわたしの命は動揺する

生誕祭を執り行いサクッと死なないようにいよう

僕ら幸福の先で待ち合わせしようね

メリークリスマス