愛を込めて

 

文庫本の隙間に潜む懐かしい匂いの存在に気づいた時、

大丈夫、君の体はまだ呼吸をしているよ。

言葉をたどる行為は世界から切り離される行為、

いいや、君が世界から離れる行為だ。

 

ペトリコール。雨降りの街の匂い。

同じ空間にいても同じ感情を共有するかどうかは、

君とわたしの相性のみの問題なんだよ。

 

「つまりは、」なんて芝居がかった君の台詞。

映画を見るみたいぼんやり遠目に眺めている時、

君の眼の前にわたしはいないけれど、

おそらくそんなとこにも気がついてない君が

愛おしくてかわいくて、永遠に僕らは平行線だ。

 

かわいいと口にする時、

かわいいという言葉は少しずつ死んでいく。

わたしも少し、死んでいく。

君はそんなことにも知らないまま。

 

そのままでいてね、

わたしと交わらないまま

一点の交わりもないまま

君はそのまま死んで欲しい。

 

ハルカカナタで息をする君が、

永遠の幸せと、大量の絶望と、

キラキラの夢とにまみれていることを願います。