戦闘態勢

剥がしたマニキュアの下に隠れた生々しい爪、案外滑らかで美しかった。目元にたくさん散らしたラメだってかわいい色のカラコンだって森や風や川の前には何の意味も持たない、都会のせいで僕らは戦闘能力が上がっているのだ、都会のおかげで、都会のせいで! …

感傷的意思表明

どこにもいけないわたしとともにわたしはずっとここにいた。あの子もあいつも君もみんな何処かへ行ってしまう、大多数に優しい世界を少数派で生きるので褒められたいたいたいたくない?ねえ、空を飛ぶ方法を探している。 足踏みばかりしていたらいつのまにか…

夜景の詩

この世界にほんとうのことなんてひとつもなかった。あるのは君とわたしの内側にあるびっくりするくらいあたたかくて鮮明な赤い血と、それから冬の冷たい空気とキラキラ。季節が繰り返されていくたび僕らはなぞっている錯覚をしているだけなんだよ、君は知ら…

夏生まれの詩

まばゆいひかり歓声とざわめきとさざなみ火傷しそうなアスファルトひんやりしたフローリング美しくて力強い夏うだるような熱気わたしはカラフルなアイスクリームわたしはスパイスの効いたチョコレートわたしはしょっぱいバター溶けないように生きのびてここ…

ひびずれてゆく痛みについて

どこを見渡してもチープな言葉ばかり 辟易としてしまうなあ世界 丁寧にざっくばらんに巻かれた毛先5センチの 傷んだ髪の毛みたいなものだ、いまのわたし それかまふゆだからと剥げかけ爪先のネイル を、見えないんだからと切り捨てた 切り捨てられたものたち…

羽虫と月

わたしが愛したのはそのひとだったのか、 才能だったのかを考えている。強い光に惹 かれる小さな羽虫だ、わたしは。 「愛が才能に惹き寄せられるのは恋でなくて、 そのひとそのものに惹き寄せられるのが恋だ として先輩が言っていた通りだったとして、 その…

信仰を葬る前に

変わらないものが存在しないことを 嘆いたわたしもまたいともたやすく 変わってしまう存在であることを嘆 くまよなか午前2時。敬愛し信仰対象 だったはずのひとや過去のわたしを すくってくれた子の言葉が届かなく なってしまったことかなしくてさみ しくて…

愛について

涼しい風が吹いた 夏が消えて あの子も消えて わたしは1人になった いつのまにかメロディも消え 静寂に取り残される夜の街の一人歩き 愛以外いらない 愛しかいらなかった いくら探しても見つからない 世界のどこにもいない貴方に 恋い焦がれている 瞬きの隙…

拝啓神様

使い古された言葉に夕陽が差し込んで綺麗だった。ノスタルジー。エモーショナル。風が吹き抜けてカーテンが揺らされたとききっとあの教室のカーテンも同じように揺れている。チリンチリンと鳴る音が、どこからなのかなんの音なのかわからないまま、わからな…

希望的な詩

確かに自分がその場にいたということ 時間が経つほど信じられなくなっていく 僕ら人間は忘れっぽくて感傷的で可愛い 時間は不可逆だから記憶は美しいのだし 音楽は最高なものになっていくんだよね もう遠い日々だって確かに在ってそして その中にわたしも確…

境界線

たいくつをひきのばしたみたいな春の日 想い出ばかり美しくなっていくけれど わたしは美しくなれないまま 桜は今年も綺麗を更新する 散ってしまえば見向きもしなくなる ような貴方であればよかったな ブラウスの隙間から滑り込む風が夏だから 数週間後に季節…

生きて

六月は神様に近い月 雨粒には神様が潜んでいて 誰かの手を引っ張って そのくせ月はいつだって遠かった 表面をほうきとちりとりで ちょっとだけいただいて わたしの爪に塗ったら キラキラして可愛くて だから生きていけるような気がするけど、どう? 可愛かっ…

断片破片

痛いくらいの冷気が人間を殺していく。冬。何度もリピートする世界のプレイリストは美しくて隙がない。神様も信じちゃうくらいの、だ。かくいうわけで冬が今年も繰り返されている訳だけど、君はいまどこを生きていますか。ネイルのはげかけた爪の色がピンク…

十二月二十五日

エトセトラとエトセトラ 人間の頭がどんどん冷やされて 反比例して過剰に生きてゆく僕ら キラキラを身に纏っているだけで 幸福をかみしめていたはずなのに 隣で、隣の隣で、 流れ星か怪盗にでもなっている気分 恋人とか友達とかは幻覚あるいはまぼろし 確か…

AとBと君と僕

いつまでも途切れることのない ずれたエイトビート さながら僕たちの象徴 テンポキープが得意だった いつまでも交わらず重ならず 追い越さず追い越されず 美しいメロディが隣で駆け抜ける 競争を、していたのはいつだっけ 形容しがたい感情が 言葉にならずに…

慎重に塗った爪などつゆ知らず午前三時に指を絡める

君が流れ星を探して夜空を眺めるとき 僕は暗がりに溶けるつま先ばかり見ていた 慎重に塗った指先の色は赤 自分のための赤が君のための赤に変わるとき 僕の足元は海月とともにたゆたっている そんなことにも気づかない君に 繋いでほしいのは指じゃなくてから…

惰性

義務感のみで水を飲む時、人間は一時停止。 煙草なんてあってもなくてもよかった。 酸素を吸うついで。その時君のことは一ミリも 頭をよぎることがないからどうか安心してほしい。 余計な言葉をいくつ交わしたところで 僕も君も交わらないのなんて百も承知だ…

せいかつの祈り

冬の記憶が鼻先を掠めたから冬 君のことばかり考えているふりばかり、冬 強力なお守りは言葉 君のカナリヤになりたくて なれなかった僕だけど 心の臓まで貫いて どうか離さないでいてほしい 「生きていてもいいよ」って 何度も舌の上で転がしたっけ いつまで…

煮るなり焼くなり

今週のお題「いい肉」 煮るなり焼くなり好きにして、 と身を任せたのはわたしだけど まさか放置されるなんて思わないじゃない そうして迎える四度目の冬も佳境 わたし、欲情したのはわたしだった 幻のわたしと君と、 「愛を統一しなかった神様の失敗だよ」 …

エンドロールの向こう側

音のない喝采にいつまでも耳をすませては めでたしめでたし、の先を探している 繋ぎ止めた指先はどこへも行けないてのひらの中 真夜中君と歩いた渋谷センター街だけが 紛れなく世界の本物だったよ 朝の中に消滅した夜を探す明け方 喫煙所の横顔は月より綺麗…

続・ロマンス詩

星みたく飛行機が飛ぶ明け方 厚底スニーカーとかぎなれた匂い 無理やり終わらせた煙草 火の粉が花火の終わりみたいだった ここには思い出がひしめき合っていて だから空ばかり見ている 座ることを想定されていない窓枠に 腰掛けて煙草をふかすとき 僕は宇宙…

眼差し

血走った眼差しに持てる限りの信頼を 余裕がないから嘘じゃない 嘘じゃないから信頼できる 穏やかな目には注意して 第六感が告げている 注意していることすらも バレないように穏やかに 貴方も視線を返すのよ 可愛い瞳には興味のあるフリを 世間の憧れ上目遣…

断片綺譚

早朝、図書館は亡霊であふれている。 借りたい本は静かにそーっと抜き取ってね。 くもり空が湿度を上げていく おみくじがつげる運勢 [お気に入りはカバンの底にしまうが吉。] 雨が降る、教室の窓の外 まるで水槽の中にいるみたいな僕ら 「下校時間を過ぎて…

夏の白昼夢

お題「思い出の味」 思い出の味、と聞くと あなたは何を思い浮かべるのでしょう 私はおそらく 雨上がりに飲んだ あのレモネード 一択なのです。 高校生活も半ば、17歳の私も変わらず私であったに違いありません。 忘れることのないあの日は、テストのために…

秋と生命

空気の中にひんやりが ひっそりと溶け込んでいる 秋だから、秋だからね 足取りが軽くなるセール 開催中ですよろしくどうぞ 歩くの楽しい 月が綺麗で君が好き 秋だから、秋だからね 月に叢雲花に風 雨降る夜もるんたった 秋だから、秋だからね 季節の変わり目…

口づけとともに

さよならから一番遠い場所で待ち合わせをしたかった めまぐるしくて楽しかったよ 時はいつの日にも親切な友達で 思い出はいつも綺麗 一日、いや一秒が過ぎるたび 僕らは少しずつしんで、新しくなる そんな当たり前のことに気づけなかった 悲しみや寂しさや愛…

タイトル「将来の夢」

真夜中のベランダは海の底 空を泳ぐ魚に焦がれているくせ 指をくわえて羨ましがるだけ 手すりにざらりと残る塩も 声を揃えて笑います せーの、で笑おう は、は、は 行き場のない感情が身体に停滞 [破裂したら自由になることができます] 美しい風船よろしく…

夏と記憶

早朝は亡霊の住処 消滅しそびれた亡霊であふれている 生ぬるい風が吹く 1日の中で唯一無二 神様がゆるした風なので わたしも仕方ないからゆるしてあげる 髪を結んで開いて結んでは 亡霊にいりまじる時 わたしはわたしの形をしている 手のひらより小さい炎が…

浜辺の詩

ぼんやりとした雲に覆われる光 世界が終わったみたいな場所で うごめく海だけが唯一生き残った生命体 足の裏、暖かい砂の感触と目の前の生き物だけ 確信が持てる気がする午後は幻 左手にさげたローファーと右手のiPhone コンクリートにおいてきたフラペチー…

東京シティ[夜の部]

美しい夜が幾重にも重なる東京シティ 躓くなんてナンセンス 小石を拾ってステップ踏んで ワン、ツー 幕開け夜は盛り 東京わたしは水の底 水面近くに浮かぶ月 ゆらぐ きらめき きらめくは 星の代打、ビル群です みんなで星座を作ろうよ 言葉と夜風ときらめき…